このテキストに「斜拱施工法」という章があった。
「理論上正シキ施工法」は「甚ダ複雑ナル曲線トナリ石ノ細工ニ困難」なので「正シキ曲線ニ近似セル螺旋状曲線ヲ用フ」とあり、先にねじりまんぼの展開図として示した絵はこの「近似セルらせん状曲線」である。
「斜拱ノ変則ニシテ現今 行ワレツツアル施工法ヲ左に説カン」とことわり二つの変則ねじりまんぼを紹介している。
「斜度小ナル場合ニハ一端ノ環石ノミヲ斜メニ切リ他ハ直拱ニ施工セラルルコトアリ」
下図はたまたま過日訪れた大山崎山荘の琅玕洞(ろうかんどう)の写真だが坑面の石を環石と呼んでいるようだ。(この環石という用語を調べたが出てこない。リングサークルを「環石」と訳したようだ。)
この石の部分を斜め加工して配置するというのだろうが、初めてこのような工法を聞いた。
「第二法ハ両坑門口付近丈 斜拱トナシ其ノ中間ハ直拱ヲ用フル 所謂 混成施工法ナリ」
これに該当するのが狼川のねじりまんぼである。
ちなみに狼川トンネルは1900年(明治33年)建設であり、「「土木施工法」に先立つこと12年前である。
ねじりまんぼのテキストともいうべき「鉄道と煉瓦 その歴史とデザイン」(小野田 滋)には全国のねじりまんぼ30件をリスト化されている。
中には撤去されて今はないものもある。
その中でここでいう「混成施工法」は5件で3件は既に消滅している。
残った2件のうちの1件が先の「狼川トンネル」(下り線)であるが、これも運用されていない。
@東海道本線 篠原〜野洲 旧屋ノ棟川トンネル(上り線) 撤去
A 同上 (下り線) 撤去
B東海道本線 南草津〜瀬田 狼川トンネル(上り線) 撤去
C 同上 (下り線) 廃止
D関西本線 加茂〜木津 第272号橋梁 現用 暗渠
「土木施工法」で昨今、はやり出した工法として紹介された「混成施工法」も5件とそう多くはなかったし、東海道本線の滋賀県内で主に採用された工法と言えなくもない。
「土木施工法」はこの二法を紹介したのち以下のように述べている。
「輓近(ばんきん=近頃)混凝土(コンクリート)施工法ノ応用熾盛ナルニ至り殊更ニ施工ノ困難ナル斜拱ヲ石ヲ以テ造ラズ多クハ混凝土又ハ鉄筋混凝土にヨリテ築造セラルル傾向アリ」
ねじりまんぼ終焉の予告である。
それゆえに、狼川トンネルのねじりまんぼは貴重な存在だ。
あれはすごい、
他のねじりまんぼと大きく違う。
ここの写真と図面、
またお借りしますね。
ついでに、野洲のも見てきた。
こっちは普通やったけど、
角度が極端に浅かった。
図面も写真もどうぞ